繊維リサイクル・製品製造

繊維リサイクルの歴史【005】再生資源業界の成立と発展

第一回でお話したように、江戸時代から屑物や古着、古道具などを扱う業者は大勢いましたが、いわゆる産業として一つの業態を形成するには至っていませんでした。これらがいわゆる「再生資源業」として成立したのは明治の中ごろから大正時代にかけてのことといわれています。そしてその再生資源業の黎明がぼろを扱う故繊維産業だったのです。当初の故繊維産業では、製紙原料、製糸原料、そしてウエスというのが三本柱で、これにともなって、ぼろを選分する業者、洗濯する業者、ウエスをカットする職人などさまざまな仕事が登場しました。

特にウエスは第一回でお話したように昭和10年ごろには日本の主要輸出商品にまで成長し一大産業として活況を呈しました。話しはそれますが、ちょうどこの頃ナカノ株式会社の創業者である中野静夫も上記の三本柱に原料としてのぼろを供給する故繊維問屋としてその前身となる中野商店を興しました。昭和9年のことです。しかし陽気満つれば陰に入るというように、やっと第一次世界大戦後の不況をのりこえた昭和12年に日中戦争が始まり、だんだん時局が厳しくなるにつれ資源を扱う故繊維業界は必然的に軍事体制の一翼として組み入れられていきました。その前に次回はこの昭和初期から終戦までをもう少し詳しくお話したいと思います。

古布を仕分ける風景