繊維リサイクル・製品製造

「よみがえり」に込めた思い

  2009年6月にクラボウが生産過程で発生する切れ端などをリユースして原料の一部に使う「アースデニム」のジーンズ生産を本格化させるというニュースがありました。それによれば、リユース素材を使うことにより製造工程で発生するCO2がジーンズ1本あたり30g少なくなるのだそうです。

  ここで述べられているCO2発生抑制量も理屈は「リサイクル軍手の環境における優位性」でお話したことと基本的に同じです。リサイクル軍手は重さ約50gで通常の軍手より約32gのCO2を抑制できます。ジーンズは1本の重さが700g位ですから、それに換算すると448gになりますね。

 よみがぁ~る

   上の写真は当社のリサイクル軍手、「特殊紡績手袋 よみがえり」です。この手袋は原料の7割に古着を原料とした、特殊紡績によるリユース糸が使われています。特殊紡績が生み出す独特の風合いのよさだけでなく、古着を原料としているために製造ロットごとに違った色合いがでてくるというユニークさが特徴です。

   「よみがえり」とは文字通り「蘇る」ということですが、その語源は「黄泉・帰り」、つまり「死の世界から帰る」という意味だといわれています。『古事記』によれば、黄泉から帰った伊邪那岐命(いざなぎのみこと)は、竺紫日向之橘小門之阿波岐原(つくしひむかのたちばなをどのあわきがはら)で禊祓(みそぎはらい)をし、黄泉でついた汚れを祓いました。この時、天照大神(あまてらすおおみかみ)・月読尊(つきよみのみこと)・素戔嗚尊(すさのおのみこと)などを始めとする万物の神々が生まれたそうです。このような神話は植物や動物は死んで朽ちて土に返り、またそこから新たな生命が生じるという温帯モンスーンに属する日本列島の気候風土が育んだ自然観から生まれたのではないかと考えられますが、要するに日本には古来から死んだ者はそこで終わりではなく、また新たな生命の源になるのだという自然観、宗教観があり、そこに「蘇」という漢字が当てられ今日の「蘇り」という言葉になったのだと思われます。

   リサイクル軍手「よみがえり」の名前には、一度衣料としての生命を終えた古着が原料となり手袋という新しい生命となって生まれてくるという意味が込められています。さらに「よみがえり」は繊維リサイクルが日本人の自然観、宗教観に根ざした伝統文化に端を発しているというルーツとしての意味も表しています。日本が江戸時代には世界に類を見ない「リサイクル社会」であったことは良く知られていますが、そのような社会が形成された背景には、島国という地理的条件や他国との交易を制限していたという政治経済的制約条件ばかりでなく、上記のような日本人が古来から持っていた自然観、宗教観が少なからず関与していたと思います。「よみがえり」はわれわれの心に深く根ざした概念でそれは今日でも変わらず生活の至るところに現れているのではないでしょうか。