繊維リサイクル・製品製造

繊維リサイクルの歴史【015】発生および回収段階での問題

当時故繊維業界が直面した問題は、大きく二つに分けられます。一つは故繊維の供給が急増した問題。もう一つは供給の増加と同時に出口としての需要が減少したという問題です。通常の製造業における仕入と違い、故繊維業界では需要動向と無関係に供給が発生しますから、需要と供給が全く相反した動きを示したことにより、故繊維業界は突如として窮地に立たされることになったのです。

では初めに供給面において具体的にどのような問題が発生したのかを見ていきましょう。

1.行政回収ルートの増加

各種リサイクル法規が整備される流れの中、容器包装・古紙に次ぐ収集品目として、自治体が衣類を分別収集の対象とするケースが2001年頃このころから急激に増加するようになりました。ところが行政回収ルートの場合、市場メカニズムが機能しないため需要と関係なく供給が増加し需給バランスが崩れてしまいました。また分別収集の場合排出時の分別意識が低くなりがちで、回収物に不能物・汚れ物などの混入が多くなるなどの問題が発生しました。空き缶やビンと違い衣料は洗えば済むという物ではなく、濡れても汚れても使い物にならなくなってしまう性質があります。この点は「資源ごみ」という名が示すとおり、衣類を「ごみ」として扱う前提に今日でも改善すべき課題があるのですが、同じ再生資源の中でも特に繊維は上記のような独特の難しさを抱えており、より良い行政回収の仕組みを作っていくためにはこうした点について事前に慎重に検討していく必要があります。

2."リサイクル"を謳う一方的な回収の増加

長引く不況やデフレの影響もあってか、このころから販売促進効果を狙った衣類の「下取りセール」などが目立つようになってきました。小売店による衣類の下取りそのものは悪いことではありませんが、回収した衣類がきちんとリサイクルされるか否かの根拠なく安易に販促や企業イメージ向上だけを狙った回収も決して少なくありませんでした。

第14回でお話しましたとおり、リサイクルシステムの構築とはこれまで「外部不経済」とされてきた廃棄の問題を経済システムの中に「内部化」する動きのことであり、そのためには内部化するコストをいかに配分するか、わかりやすく言えば各経済主体がリサイクル費用を応分に負担することどうすれば合意できるかが大きな問題となります。解決の一端としては、リサイクルを要請する側と引き受ける側双方が責任ある経済主体であり、回収した衣類を確実にリサイクルすることを保証できるサプライとリサイクルをつないだチェーンを構築する必要があるのです。

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