繊維リサイクル・製品製造

年頭所感  「和紙の無形文化遺産登録に思う」

  新年明けましておめでとうございます。皆様におかれましては、平成27年の新春を晴れやかにお迎えのこととお慶び申し上げます。

   さて、2013年の和食につづき、昨年末に和紙(本美濃紙・細川紙・石州半紙)が、ユネスコの無形文化遺産に登録されました。日本の伝統技術が人類の遺産として認められたことは誠に喜ばしい限りです。

   無形文化遺産は2001年から「人類の口承及び無形遺産の傑作の宣言」(傑作宣言)として隔年で発表され、2006年正式に発効しました。ユネスコ無形文化遺産保護条約第2条によれば、無形文化遺産とは次のように定義されています。少し長くなりますが、引用させていただきます。

   「無形文化遺産とは、慣習、描写、表現、知識及び技術並びにそれらに関連する器具、物品、加工品及び文化的空間であって、社会、集団及び場合によっては個人が自己の文化遺産の一部として認めるものをいう。この無形文化遺産は,世代から世代へと伝承され、社会及び集団が自己の環境、自然との相互作用及び歴史に対応して絶えず再現し、かつ、当該社会及び集団に同一性及び継続性の認識を与えることにより、文化の多様性及び人類の創造性に対する尊重を助長するものである。」

  つまり、無形文化遺産は①時代を超えて伝承されるものであり、②環境や自然との相互作用および当該社会の歴史に対応して再現し、③当該社会に同一性・継続性の認識を与え、④文化の多様性・人類の創造性に対する尊重を助長する、慣習・描写・表現・知識・技術(また、それらに関連する器具・物品・加工品・文化的空間)であるということになります。

  このような定義をもって無形遺産を登録し、保護しようという動きが注目されるようになったのは、資本主義経済、とりわけグローバル経済と呼ばれる1990年の冷戦終結後に活発化した市場原理主義が、自然を破壊し、各地の文化的多様性を損ない、人間社会全体に深刻なダメージを与えるようになってきたからではないかと思います。無形文化遺産は市場原理が破壊する自然環境や人間社会の多様性を保護し、次世代に継続していこうという世界的な試みなのではないでしょうか。

  こうした動きから、われわれ再生資源業を振り返る時、再生資源業も自然環境を守り人間社会の多様性を保護し、次世代に継続する、無形文化遺産に匹敵する営みなのではないかと強く感じるのです。

  ご承知のように、我が国は江戸時代の昔から再生資源が人々の生活に根付いたリサイクル大国でありました。江戸の町では生ごみはもとより、かまどの灰や糞尿に至るまで資源化され、しかもそれが経済活動を支える重要な要素だったのです。再生資源業は資源が希少な日本が生んだ歴史ある文化であり、自然環境保全に寄与することはもちろん、資源を有効利用するという慣習そのものが、人類の創造性に影響を与える行為であると言えます。また、リサイクルがわが国の伝統文化であるという認識を深くすることが、われわれの社会に同一性・継続性の認識を与え、地域社会を守る強固な街づくりの基礎となるでしょう。

  リサイクル文化が故郷再生、地方創生の核となるものと信ずるところです。

  我々が取り扱う「もっぱら物」4品目を例にとっても、衣類は人類存続の三要素「衣・食・住」の一つとして、生活に彩と温もりを与えてくれます。紙は2000年以上昔に発明されて以来、人間の精神や、歴史を伝達する礎でありました。また鉄は大きな括りで見れば、現代も依然として鉄器時代と呼んで差支えないほど、われわれの文明を象徴する存在です。ガラスもそうです。酸や有機溶媒などに侵されない安定した物質なので、半永久的に再生利用できるという特性を持っています。

  こうした人類文明の根幹をなす主要資源にかかわり、それを将来にわたって有効活用する再生資源業という営みは、日本の伝統文化であるにとどまらず、世界の文化の多様性や人類の創造性に対する尊重を助長する慣習として、世界に発信すべき無形文化遺産であると、年頭にふっと思うのです。

  リサイクル文化のユネスコ無形文化遺産登録を!

                                              -2015年新春-